楽器演奏で有名な国際コンクールといえば
- チャイコフスキー国際コンクール
- エリザベート王妃国際音楽コンクール
- ショパン国際ピアノコンクール
その中のチャイコフスキー国際コンクールは、1958年から4年おきに開催されるコンクールで、第1回ではピアノとバイオリンだけでしたが、時代を重ねるうちに部門が増え、現在はピアノ・バイオリン・チェロ・声楽・木管楽器・金管楽器の演奏で各部門があります。
そして、1990年からはバイオリン製作の部門も設立されています。
場所はロシアの首都、モスクワで開催されます。
正式名称は
Международный конкурс имени П. И. Чайковского(露)
The International Tchaikovsky Competition(英)
第13回コンクールが行われるはずだった2006年は、モスクワ音楽院大ホールの修理やFIFAワールドカップが重なること、スポンサーの未決定などの理由から開催が一年見送られ、次の年の2007年6月に開催されました。
バイオリン製作部門が設立されているとは言え、公式サイトで製作部門のタブがなかったり、過去の受賞者の履歴が無いなど、情報はあまり公開されていません。
それでも、製作コンクールの中ではトリエンナーレ、ミッテンヴァルトコンペティション、ヴィエニアフスキーコンクールと並んで、権威のあるコンクールの一つです。
その製作部門では2回目に当たる1994年で、日本人の橋本 剛俊氏がチェロ製作部門で優勝しています。
第62回2019弦楽器フェア 出展目録:全個人会員より
橋本剛俊 プロフィール :
1986年 都内工房で修業後、渡伊。イタリア国立クレモナ国際ヴァイオリン製作学校入学。E.スカルピーニ、S.コニア氏に師事。1990年 同校卒業。クレモナで開業。
1991年 バヴェーノ全イタリアヴァイオリン製作コンクールヴァイオリン部門第1位ゴールドメダル受賞。
1993年 バヴェーノコンクール チェロ部門第1位ゴールドメダル受賞。
1994年 モスクワ・チャイコフスキー国際コンクールチェロ製作部門第1位ゴールドメダル受賞。
1995年 バヴェーノ・コンクール・コントラバス部門第1位ゴールドメダル受賞。
その他数々のメダル受賞。
山野楽器/イタリアンヴァイオリン Taketoshi Hashimotoより
さらに、ヴィエニアフスキーコンクールでも紹介した、菊田 浩氏もバイオリン製作部門で2007年に優勝しています。
菊田 浩 Kikuta Hiroshi
1961年 愛知県名古屋市に生まれる。
1980年 クラシック音楽のミクサーとしてNHKに勤務、コンサートホールでのオーケストラ録音などを担当し、ヴァイオリンの銘器に数多く出会い、その音色に魅せられる。
1996年 音楽ミクサーの仕事を続けながら、ヴァイオリン製作を開始。現代クレモナのスタイルを追求する中、ニコラ・ラザーリ氏の楽器に出合い、大きく影響を受ける。
2001年 イタリアに留学、クレモナ国際ヴァイオリン製作学校に入学、 ジオ・バッタ・モラッシー氏の直弟子の二人、ロレンツォ・ マルキ氏とニコラ・ラザーリ氏に師事。
2004年 同校を首席にて卒業、最優秀卒業生として表彰、奨学金を授与される。
2005年 引き続きニコラ・ラザーリ氏に師事、独自のスタイルの追求も始める。
2009年 クレモナ市内に高橋明氏と共同で工房を開き、現在に至る。
・イタリア弦楽器製作家協会(ALI) プロフェッショナル会員
・日本バイオリン製作研究会(VSJ) 会員
・関西弦楽器製作者協会会員
関西弦楽器製作者協会HP 参加会員 より
この二人は時代こそ違いますがどちらもイタリアのクレモナでバイオリン製作を学んでいます。
また、無量塔蔵六氏が1986年から2002年までレギュラー審査員でもありました。
ミクスト・ミューズ : 愛知県立芸術大学音楽学部音楽学コース紀要 8号(2013)
七條 めぐみ :無量塔蔵六ヴァイオリンを語る より
無量塔 蔵六(むらた ぞうろく、本名・村田 昭一郎(むらた しょういちろう)、1927年(昭和2年)3月4日 - 2020年(令和2年)1月30日)は、日本のヴァイオリン製作者。
(以下抜粋)
1962年、西ドイツのバイエルン州にあるミッテンヴァルトの国立ヴァイオリン製作学校へ留学し、1963年、日本で初めてマイスター国家試験(Geigenbaumeister)の資格を取得
1979年4月2日、後継者の育成のために自宅の敷地に東京ヴァイオリン製作学校を開校する
2020年1月30日、直腸がんのため死去
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
これもヴィエニアフスキーコンクールの回でお話しましたね。
今まで紹介してきたものは優勝者しかお話していませんが、優勝以外の上位でも他の多くの日本人が入賞しています。
やはり、日本国内ではイタリアやフランス・ドイツで作られたものがどうしても人気がありますが、日本人の製作家もこの様なコンクールで数々の受賞歴があり、世界的に見てもしっかりとした実力があることが証明されています。
「高品質な個人製作家の新作を次の一台に」と考えている方は、日本人の製作家のものもぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
出典・参考文献
THE XVI INTERNATIONAL TCHAIKOVSKY COMPETITION
第62回2019弦楽器フェア 出展目録:全個人会員
山野楽器/イタリアンヴァイオリン Taketoshi Hashimoto
宮地楽器/トピックス / チャイコフスキー・コンクール(2007)
ミクスト・ミューズ : 愛知県立芸術大学音楽学部音楽学コース紀要
8号(2013) 七條 めぐみ :無量塔蔵六ヴァイオリンを語る
Wikipedia