チェコのバイオリン製作は日本ではあまり有名ではありません。
しかし、旧シェーンバッハ、現在のルビーという街は、かつて「オーストリアのクレモナ」と呼ばれた時がありました。
(オーストリア=ハンガリー帝国領だった時代にそう呼ばれました)
1873年から2005年まではルビーにもバイオリン製作学校があり、2005年以降はCheb(ヘプ)という街に移転してはいますが、ヨーロッパにある数少ないバイオリン製作学校のうちの1つです。
この様に、チェコは古くからバイオリン製作を行ってきた歴史があります。
そして、チェコでバイオリン製作のコンクールが1997年から開催されています。
正式名称は
MEZINÁRODNÍ HOUSLAŘSKÁ SOUTEŽ PRAHA(チェコ)
INTERNATIONAL VIOLIN MAKING COMPETITION PRAGUE(英)
です
2017年に開催された時のロゴ
チェコのバイオリン・メーカーであるJaromír Joo(ヤロミール・ジュー)が1997年に彼の故郷であるNáchod(ナーホト)でこのコンクールを創設し、1997、2004、2008、2012、2017年と計5回のコンクールを開催しています。
Náchod(ナーホト)
このヤロミール・ジューは以前お話したヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン製作コンクールの第6回(1981年)で3位に入賞していて、第10回(2001年)の審査員も務めています。
2012年まではナーホトで開催されていましたが、ナーホトは地方都市であるため2017年からはより魅力的でアクセスの良いプラハで開催することになりました。
このコンペティションは実にユニークで、他のコンクールとは一線を画します。
その一つは「匿名ではない」ことです。
つまり、他のバイオリン製作コンクールは審査に「公平を期す」という名目で、製作者はラベルや刻印をしていない、または隠して出展しなくてはならず、審査員は誰が作ったかわからない状態で審査します、
ところが、このコンペではラベルははられた上で隠されずに出展され、審査員は誰が作ったかわかった上で審査します。
ラベルが貼られているどころか、各楽器のところには各製作者のビジネスカードも貼られている。
また、製作者はコンペ中に決められた会場でスクロールを作り上げなくてはなりません。
そして、2017年からは競技者である製作者自身も審査に参加しています。
競技者自身が審査している様子
このため、参加者はコンペ開催中は必ず直接競技会場に出席する必要があります。
ただし、参加者は40人に制限されていて、他の製作コンクールのように参加者が百数十と言う規模ではありません。
音響テストだけは製作者がわからない状態で審査され、一般聴衆の採点も追加されます。
この様に、このコンペは参加者全員で審査するなどの透明性や、参加者同士と審査委員との議論や交流による若手の育成など、他のコンクールとは大きく目的が異なりユニークです。
直接会場に出席しないといけないことや、参加者が40名に絞られていたりするなど、日本からはなかなか参加するのにハードルがいるためでしょうか、日本人の入賞者は今の所いません。
しかし、まだ回数も少ないですから、いずれ日本人の優勝もあることでしょう。