弦について色々お話をしてきましたが、最後に交換方法についてお話をしようと思います。
「そんなん取り替えるだけやん。」
と思われるかもしれませんが、バイオリン族の弦交換には注意する点がいくつかあります。
バイオリン族は魂柱や駒が弦の圧力によって立っています。その為4弦すべてを同時に外すと駒は外れ、魂柱も場合によっては倒れてしまいます。
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駒と魂柱(バイオリンの断面図)
「それの何が問題じゃい」
とか言わないでくださいね。
「たましいの柱」のときにお話をしましたが、魂柱は接着されているわけではなく摩擦と弦の圧力によって立っています。そのため、駒が外れた場合、弦の圧力が無くなって魂柱が倒れてしまうことがあります。
倒れてしまった魂柱は「魂柱立て」という特殊な工具を使って立てます。もし魂柱立てを持っていたとしても、素人がきちんと立てられるものではありませんので、倒れた時は技術者のいるお店へ行かないといけなくなります。
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魂柱立て
その上、「駒の立つところ」でお話したように、駒と魂柱の位置関係が音色・音量・バランスを左右するので、駒が外れると元あったところに立て直すのは厳密には不可能になり、音が変わることになります。
(ただ、たとえ同じ銘柄の弦でも古くなると劣化して音色が変化するので、新品に弦交換すると音色は必ず変わりますけどね。)
では、それを避けるためにどうするか。
バイオリンの弦交換は弦1本ごとに交換と調弦を行っていくのです。
こうすれば駒が外れるどころか動くことすら無いですからね。
バイオリン属の弦は高い音から順に1番(E)線・2番(A)線・3番(D)線・4番(G)線と呼びます。
バイオリンの場合、交換順序は調弦順序と同じ2番線→3番線→4番線→1番線と行うのが多いですが、特に規定はありませんのでやりやすい弦からやっても構いません。
弦の交換方法
1. ペグを回して元の弦を緩めてペグから取り外し、弦の根元側をテールピース又はアジャスターから外して、弦を取り外します。
2. 新しい弦を袋から取り出し、元の弦を取り外した逆の方法で取り付け、調弦します。
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調弦は重音で出来る人はそれでいいですが、出来ない人はチューナーを使って下さい。重音で調弦が出来る出来ないよりも、むしろきちんと音があっていないほうが良くないですから、チューナーを使うことは悪いことではありません。
チューナーは必ずしもバイオリン専用のものでなくても良く、スマホのアプリでも大丈夫です。
3. 駒の角度を確認して倒れているようであれば直します。
殆どの場合、調弦は緩んだ弦を張ることが多いものです。つまり、駒は弦によってペグ方向に引っ張られ、指板側に倒れる形で傾いていきます 。
この傾きを放置していると弦の張力によって駒は押さえつけられ、変形していきます。
もしこの変形が酷くなると駒が折れてしまう場合もあります。
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調弦をした時には毎回楽器を横から見て駒が傾いていないかどうかを確認し、真っ直ぐになるよう直す必要があります。まっすぐに立っていれば曲がることはありません。
弦交換の時だけでなく、普段の調弦でも確認してくださいね。
駒が斜めになっている時のなおし方
テールピースの下にクロス等の柔らかい布を敷いておき、テールピース側を自分に向けて楽器を太腿の上に置き、両手で駒を持って傾きを直します。
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駒の正しい角度はテールピース側が表板に対して直角です。
※完全に曲がってしまっている駒は無理に直さず修理に出すようにしましょう。
4. 次の弦を同じ手順で交換していき、4本すべてを順番に交換します。
このように、弦交換で大切なことは
- 一本ずつ交換すること
- 駒を真っすぐにすること
が大切です。
ご自分で交換する時は注意して行ってください。
まあ、でも弦を購入する時はお店に行きますから、せっかくなのでその時に店員さんに弦を交換してもらえば間違いがありません。それに、良心的なお店なら軽く点検もしてもらえますから、自分で気が付かなかった不具合も見つけてもらえることがあります。
定期的なメンテナンスをすると楽器を長持ちさせられますから、弦交換は「定期的」と言う意味でもちょうどよいタイミングですよ。
(ただし、弦交換の工賃や点検が有料なお店もあります。)
最後の最後に「弦の選び方」で説明し忘れたことを付け加えます。
よくある音の悩みで音がつまった感じがしたり、キーキーと裏返ったりすることがあります。
これはその楽器にとって弦の張力が合っていないことで起こる症状です。
張力の簡単な確認方法として、調弦を変えてみる方法があります。
- つまった感じがするなら、その弦を1音下げて(張力を下げて)調弦してしてみる。
- 裏返りやすいなら、その弦を1音上げて(張力を上げて)調弦してみる。
以上の方法で症状が改善されるなら
音がつまった感じがする弦を張力の弱いソフトな弦に、
音が裏返りやすい弦を張力の強いハードな弦に
交換すると改善される場合があります。
有名メーカーの主要な弦には同じ銘柄でもソフト(ライト)・ミディアム・ハード(ストロング)などの種類の異なる張力の弦を用意してある場合がありますので、弦の銘柄を変えたくない場合はそちらで交換してみましょう。
使用している弦のメーカーのサイトを見てみると取り揃えがより詳しく載っていますので参考にして下さい。
張力別の取り揃えが無い場合は銘柄を変えるしか無いと思います。
なお、ガット弦やE線用スチール弦は弦の太さで細い(ソフト)・太い(ハード)と分けてある場合もあります。
参考にしてみてください。