前回、ジェミニアーニの教則本について見ていきました。
今回はあの大作曲家であるモーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)の父親であるレオポルト・モーツァルト(Johann Georg Leopold Mozart 1719 – 1787)の出版した教則本です。
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Pietro Antonio Lorenzoni (1721-1782) "Leopold_Mozart"
彼は1756年に「Versuch einer gründlichen Violinschule」という教則本を自費で発行し、その後各言語で出版されるほど人気の教則本となりました。
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Versuch einer gründlichen Violinschule 表紙 1787年版
彼はこの教則本で図を使って2種類の構え方を教えています。
1つ目は「バイオリンはさりげなく胸の高さで横向きに構え、このように弓のストロークは横向きよりも縦向きになります。」と言っています。
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この図はLeopord Mozartの肖像でもあり、構え方の例を示した図でもあります。
この構え方は「観客からは見栄えが良いが、演奏者自身にとってはやや難しく不便である」とも言っています。
さらに、楽器は鎖骨の上にあり、顎で挟んではいませんので、
「手が上に行く(ハイポジションからファーストポジションへ移動する)と楽器は保持されていないため落ちてしまうので、そうならないために親指と人差し指の間で楽器を保持するよう、長い練習を通して克服しなければなりません。」
と、ポジション移動が容易ではないことも言っています。
もう一方の構え方は、「バイオリンは、肩の前の部分に少し重なるように首に当て、E線側、またはその横側に顎を置くようにします。」と、顎と肩で挟む方法を指導しています。このおかげで「たとえ強い動きで手を上下に動かしても、バイオリンは常にその場所に不動のままになる」とポジション移動が容易になることを言っています。
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ということは、バロック後期・または古典派初期であるレオポルト・モーツァルトの流派はバイオリンは顎で挟む方法を取り入れていたことになります。
ただし、ここでの顎を乗せる場所はE線側、つまり現代の顎当てがついている位置とは反対の右側です。
確かに、ストラディバリウスでもE線側(向かって右側)のニスが剥げている楽器が多く見受けられますので、実際に当時はここに顎を乗せて演奏されていたのでしょう。
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Antonio Stradivari 1721 "Lady Blunt"
このことについては以前の投稿「フィッテイングパーツ⑥」でもお話しました。
なお、この教則本では間違った構え方の図も載せています。
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何が違うんだと思うかもしれませんが、視線の方向や弓を持つ手の肘が上がりすぎていること、スクロールが下がりすぎていることなどを示していて、顎を置く場所とかの指摘ではありません。
この教則本では顎で挟まない方法と挟む方法の両方が載っていますから、このあたりからバイオリンを顎で挟むのが一般化していったのではないかと考えられます。
ただし、顎を乗せる所がG線側(楽器の左側)になるのはもう少し後の事になるようです。
出典・参考文献
Wikipedia
Leopold Mozart: https://en.wikipedia.org/wiki/Leopold_Mozart
Lady Blunt Stradivarius: https://en.wikipedia.org/wiki/Lady_Blunt_Stradivarius
Leopold Mozart著 「Versuch einer gründlichen Violinschule」