なんと言っても取り扱っているものですし、最初なので基本から入っていくべきかと。
ということで、まずは広辞苑で調べてみました。
バイオリン : 弦楽器の一。胴に4弦(E・A・D・G線)を張り5度間隔に調弦し、左手指で指板上に弦をおさえ右手に弓を持ち、弦を擦って演奏する。ビオラ・チェロ・コントラバスとともにバイオリン族の擦弦楽器で、その中の最高音域を担当。音域はG音より上方約4オクターブ。16世紀頃北イタリアで考案され、次第に改良・発達。音色が華やかで表現力に富み、独奏・合奏の中心的楽器となった。提琴。ビオロン。
広辞苑 第五版 岩波書店
思ったより書いてあってびっくりです。音楽に素養のある人なら大体わかりますが、結構専門用語入っているなぁと思います。知らない人ならこれから勉強を、知っている人は復習として、身についている人はすっ飛ばしてそれぞれ見ていきましょう。
弦楽器の一。
いきなりそこから?と思いますが、基本ですから結構重要です。
簡単に言えば張ってある弦で音を出す楽器。バイオリン以外ではギター、ハープ、二胡、箏(琴)、三味線、琵琶など。
「擦弦楽器」と「撥弦楽器」に大別できます。
擦弦楽器(さつげんがっき)
後半に出てくる語句ですが、流れで説明します。
弦を弓で擦って(こすって)連続音を出す楽器のことをいいます。もちろん擦るだけではなくて弾いて(はじいて)音を出すこともあります。バイオリン以外ではビオラ・ダ・ガンバ、モリンホール(馬頭琴)、二胡など。
弾いて音を出すのが主体の楽器は「撥弦楽器(はつげんがっき)」と言います。(ギターとか)中身に弦が張ってあり、それを叩いて音を出すピアノもありますが、ピアノは鍵盤楽器と呼びます。
モリンホール :二胡: ビオラ・ダ・ガンバ
胴に4弦(E・A・D・G線)を張り5度間隔に調弦し、
胴というのは本体のことです。弦は音を出す元となる紐で、昔は羊の腸をよじって作ったガット弦が主流でしたが、現在ではナイロンのような合成繊維や金属を芯に使っている弦が主流です。その弦を本体に4本張って、それぞれドイツ音名で高い音の方から E・A・D・G に調律します。イタリア音名で言うところの mi(ミ)・la(ラ)・re(レ)・sol(ソ)、日本音名で言うとト・ニ・イ・ホになります。
音楽用語で、2つの音の高さの隔たりを「音程」と言い、その間隔を「度」で表します。5つの音の間隔を5度の音程と言い、その間隔で弦の音を調律することを「5度間隔に調弦」と言っています。
この楽譜はバイオリンの出せる音の範囲を示したもので、左側の4つの音符が調弦する音になります。それぞれの間隔を見ていくと、下から「ソ・ラ・シ・ド・レ」、「レ・ミ・ファ・ソ・ラ」、「ラ・シ・ド・レ・ミ」と5つになっているのがわかると思います。(音程は初めの音も入れて数えます)
ちなみに、楽譜の一番左の記号は「ト音記号」と小学校で習うと思いますが、「バイオリン記号」とも呼ばれます。
左手指で指板上に弦をおさえ右手に弓を持ち、弦を擦って演奏する。
指板とはバイオリンの弦の下にある黒いところ。指で弦を指板に押し当てて、その場所によって音の高低を作ります。
弓はさっき擦弦楽器の時にサラッと出てきましたが、ざっくり言うと棒に馬の尻尾の毛が取り付けてあって、その毛で弦を擦るものです。ですが、それだけでは実は音が出ません。毛に松脂(松の樹液を固めたもの)を塗って摩擦力をつけてからでないと擦って音を出すことは出来ないのです。(初心者の方が新品の弓や毛替えしたての時によくびっくりします)
形が武器の弓に似ている、または起源が武器の弓だったからこう呼ばれる様になったようです。 (諸説あり)
ピアノ三重奏:左端がバイオリン奏者
ビオラ・チェロ・コントラバスとともにバイオリン族の擦弦楽器で、その中の最高音域を担当。
最も高音域なのがバイオリンで、最も低音域がコントラバスです。英語(イタリア語)表記で
Violin (Violino): Viola (Viola): Cello (Violoncello): Contrabass (Contrabbasso)
となります。英語の語源はイタリア語で、それぞれを英語的に変化させたり、あるいは省略させたりしたのが英語の単語になっています。※Violoncelloは英語でも正式名称として通じます。
もともと中世イタリア地域では擦弦楽器を「Viola」と読んでいました。(今のビオラとは形が違います)その後、楽器が発展していく中で形や大きさ、バリエーションが増えていって、それぞれの形が定着していきました。命名はそれぞれ以下の様になります。
・「小さい」という意味の接尾語「-ino」をつけて「Violino」(小さいViola)
・大きさが大体一緒だった「Viola」
・「大きい」という接尾語「-one」をつけたバス担当の楽器「Violone」(大きいViola)にさらに「小さな部屋」という意味の言葉「cella」をつけて「Violoncello」(小さいViolone)
・バスの音域「Basso」に「反対の(その向こう)」という接頭語「contra-」をつけて「Contrabbasso」(bassoのより低い音域、)※b2つは誤記でないですよ
と呼ばれるようになりました。
ちなみに、現在ではバイオリン族の一員にされているコントラバスは、本当の起源がビオラ・ダ・ガンバと同じビオール属で、ビオール属と同じ4度調弦と言うこともあって、「コンバスはバイオリン族ではない!」という人もいます。
音域はG音より上方約4オクターブ。
音域とは音の出る範囲。G音とはバイオリンで一番低い音、先程の楽譜で一番下の音符の音です。また、「15ma」と楽譜に書かれているところがありますが、quindicesima alta(イタリア語で「15番目まで高く」)という2オクターブ(15音)上を演奏するという表記です。これがバイオリンの音の出る範囲ということですが、ここまでの高音を出すのはただ指で押さえて弓で擦れば良いというような簡単なことではありません。何故かと言うと、弦というのは音を出す部分を短くすればするほど高い音が出ますが、きれいな音にするのはどんどん難しくなるので、演奏に耐えうる音にするには簡単なことではなく、「奏者の技量次第」となるわけです。
※他にもフラジオレットという技法もありますがここでは割愛します。
16世紀頃北イタリアで考案され、次第に改良・発達。
これは話が長くなるので次回に詳しくお話します。
音色が華やかで
高音域の楽器なので華やかになるのは当然としても、ピアノやギターはなんとなく哀愁を感じる音ですから、それに比べるとバイオリンは華やかな印象です。同じ弦楽器のギターと違うのは弓で弾くところが一番大きいですから、やはり弓で音を出すことによって華やかになるのではないでしょうか。
表現力に富み、
バイオリンは指板にギターなどで使われている「フレット」という音の高低を決めるものが無いので、音の高低を決めるのは演奏者(バイオリニスト)自身になります。
もっと細かく言うと、ピアノやギターは鍵盤の音やフレットの幅が決まっていますので「ド」と「ド♯」の間の音は出すことが出来ません。しかし、バイオリニストは調弦が正しいままでも、指で押さえる位置を変えることで「ド」と「ド♯」の間の音を出すことが出来るのです。(ピアノやギターは調律を変えない限り不可能です)その上、弓で引くバイオリンは音を出している途中で音量を上げることも可能です。(これも電気的に拡声しているものを除いて、ピアノやギターには不可能です。)
音の高低を微妙に変えることが出来、発音途中で音量も自由自在に変えることの出来るバイオリンという楽器は、この「融通さ」によって豊かに音楽を表現出来るのです。ただし、その分演奏技術を習得するのはとても難しくなるので、神童などの例外を除いてきちんと演奏できる様になるには数年間に渡る練習を費やさないといけなくなります。
独奏・合奏の中心的楽器となった。
事実、クラシック界で独奏(ソロ)楽器としてはピアノと並んで最も使用される楽器であり、合奏(室内楽やオーケストラ)でもファースト・バイオリンのパートが曲の重要な旋律を担当することが多いです。
提琴。ビオロン。
日本語ではバイオリンのことを「提琴」とも呼んでいました。「提琴」という楽器は、もともとは中国の擦弦楽器で、胡弓や二胡の大型版のような楽器だったようです。中国国内ではバイオリンのことを「小提琴」と訳すようなので、ここを起源に日本も「提琴」と呼ぶようになったのかもしれません。(日本には中国の楽器の「提琴」が無いので、略しちゃったんでしょうねぇ)
ビオロンはフランス語の日本語変換のようです。
現在ではそれぞれこの呼名を知っている人も少なくなっています。
いかがだったでしょうか。
案外掘り下げると深い内容になって自分でもびっくりです。ここまで長くなると思ってなかったですし、まだ終わっていませんからね。
次回は今回パスした、16世紀の北イタリアの話をしたいと思います。
また長くなりそうだ・・・
参考文献
岩波書店 広辞苑 第五版
小学館 伊和中辞典 第2版
音楽之友社 音楽中辞典 第31版
Wikipedia
「ヴァイオリン」
「ヴィオール属」
「馬頭琴」
「二胡」