前回、下倉バイオリンに入社したところまでをお話ししました。
この楽器店での待遇はとても良かったです。特に技術者は優遇されていました。
仕事内容もとても面白く不満もなかったのですが、しかしその中でぼんやりと「いずれは留学」と考えており、少しづつ情報収集をしていました。
同僚であった妻と結婚し、1年ほどはその職場でそのまま二人共働いていましたが、人間関係のいざこざなどもあって、2006年の11月に私達夫婦はイタリアに留学することを決意しました。
しかし、クレモナに留学するには9月にイタリア文化会館で手続きを行っておかないといけないとなっているではありませんか。
「こりゃぁ来年はダメかな?」と思いましたが、とりあえず出来るだけの事はしようと思い、すでにクレモナに留学していた国立音楽院時代の同期に相談しました。
すると
「そんなん通さなくても全然大丈夫ですよ!むしろ面倒くさいだけですから。」
と励まされ(?)、彼に願書等を送ってもらい、全然わからないイタリア語を一生懸命調べながら願書とプロフィール的なものとパスポートのコピーを封筒に入れて学校に送ったのが12月末のことです。
1月の中頃に返事が来て、3月末までに高校の卒業・成績の等価証明とユーロパスという履歴書みたいなものを提出しなければならない事が記載されておりました。
これ、日本だと違和感ありませんが、実は学校を含めたイタリアの国家機関に日本から手紙を送って1ヶ月もしないうちに返事が来るなんてことはそうそう無いです。留学中何度か日本からクレモナに手紙を送ってもらいましたが、1ヶ月以上かかっていた事もありましたから、すごい運が良かったと思います。(逆にクレモナから日本だと結構早かったりしました)
内容がなんとなくは分かったのですがいかんせん外国語ですから、こりゃ専門家に聞いたほうが良いなと思い翻訳家の所へ事情を説明に行くと、どうやら母校の高校に作ってもらった正式な証明書を翻訳家に翻訳してもらい、それをイタリア領事館(又はイタリア大使館)に提出して証明してもらうのが等価証明というものらしい。
「えー!間に合うのかよ・・・」と思いながら母校に連絡して証明書を出してもらうと、なぜか在学証明だったり、成績証明は毎年の平均点が記載されていないといけないのでもう一度出してもらわないといけなかったりとか、翻訳家のところに行くまででも大変でした。
翻訳してもらうのはスムーズに出来、「残り2ヶ月あるからまあ大丈夫でしょ」と思っていたら在イタリア領事館で落とし穴がありました。
いや、今思うと相手はイタリアの国家機関ですから一筋縄では行かないのが当たり前なのですが、まだそんなことを知らないウブな日本人ですから日本的感覚でいたのですよ。
書類をイタリア領事館に発送してから一ヶ月以上経っても音沙汰が無かったので電話で確認をしてみたら、「~さんですね、書類は届いているのですが・・・(中略)申し訳ありませんがもうしばらくお待ちください」とのこと。
結局その後一週間ぐらいで届きました。もしかして忘れられていたのでは?とちょっと疑いたくなります。
その間、入学試験のためにクレモナに行く航空チケットや滞在先の手配、当時住んでいた家の片付けや精算、渡航準備や引っ越し荷物(バイク含む)を実家に送る準備などもしていました。
しかし、実は下倉バイオリン社を辞めるのは3月末になっていたので、これらを仕事しながらやってたんですよね。我ながら二人共頑張ったと思う。
下倉バイオリン社側としては、正直技術者が同時に2人も抜けることになって結構痛かったと思うのですが、社長は笑顔で「がんばれよ」と4万円ほどする電子辞書(イタリア語が入ったものは当時は結構高かった)を餞別として手渡してくれました。
器の大きさを見せつけられ、さすが伊達に社長をして無いなと感動しました。
そんなこんなで、試験は6月にあるのですが、語学留学もしないのでなるべく早めに行ってイタリア語に慣れておこうと思い、4月の初めに出国したのでした。
・
・
・
今思えば留学開始前後が一番頑張っていた気がします。
次回からイタリア編に入ります。