前回バイオリン製作家になる方法というか入門方法をお話ししましたが、せっかくなので私のこの世界に入った時の事や留学体験記などをお話ししていこうかなと思います。
まず、なぜこの道を目指すことになったのかをお話ししないといけませんね。
私は中学校の時に吹奏楽部に入部していました。担当楽器はパーカッション(打楽器)です。
その頃はもう打楽器の演奏が楽しくて楽しくて仕方ありませんでした。高校に入ってからも吹奏楽部に入部したのですが、兄がギターをしていたのに影響を大きく受けて途中からバンド活動(担当はドラム)に専念するようになり、部活は途中でやめてしまいました。
しかし、高校を卒業してから社会人になるまでは音楽活動をまったくしませんでした。
そんな社会人になって落ち着いたころ、もう一度音楽活動をやりたくなったのです。
そこで選んだ楽器がバイオリンでした。
なんでバイオリンを選んだかというと、まず今までリズムだけしかできない打楽器をしてきたので、メロディーが演奏できる楽器がしたかったこと。そしてピアノよりも手軽であり、クラシックではピアノに並ぶ人気のある楽器でありながら、なかなか身近に接することの無いあこがれの楽器でもあったのです。
はじめは趣味で演奏を始めていたわけですが、そんなある日、図書館で「ヴァイオリンを作る」という本に出合います。
(新技法シリーズ)ヴァイオリンをつくる:川上 昭一郎 (著)
今この本を見かえすと趣味で作る分には良い本なのですが、販売するための製品を作るには足らない部分が多い本です。(当たり前ですが)
それでも、インターネットも当時はほとんど普及しておらず、バイオリン製作の情報を知るには本やビデオ・TVといったメディアが中心でしたから、当時の私がバイオリンの製作方法を知るにはうってつけの本でした。
それ以前にも、小学校の時に演奏のことも含めてまったくもってバイオリンのことを知らなかったにもかかわらず、合板を使ってバイオリンらしきものを工作で作ったこともありました。
このように、もともと子供の頃から物を作ることが大好きだったこともあって、この本に出合ってから演奏よりも製作の方に大いに興味が傾いたのです。
結果、当時就いていた仕事に将来の不安があったこともあり、一念発起してバイオリン製作の世界に飛び込もうと思ったわけです。
28歳の時でした。
さて、そう思ったのは良かったものの、どうすればいいかよくわからず、はじめは鈴木バイオリン製造(株)に入社すれば製作が出来るかもと安易に思っていました。しかし、前回の説明ようになかなか難しく、求人を見つけることすらできずどうしようかと思っていました。
そんなところに「国立音楽院」にヴァイオリン製作科なるものがあることを知ることとなります。
まあ、普通はこれで「バイオリン製作の方法がこの学校でわかる」と思うものですが、私は「業界とのコネをつくるために入る」と思ったのでした。
いや、だからといって全然真面目じゃあなかったかというとそうではなく、真剣に取り組みましたよ。もともとモノ作りは大好きですからね。
そんなもの作りに対する姿勢を評価してもらったことや(いや、勝手にそう思っています)、年齢が他の学生よりも高かったこと、そして「卒業後はとにかく生活するために就職したい」と常々言っていましたから、同学年の中でも一番最初に講師から推薦してもらい、下倉バイオリン社に入社できることになりました。
でも、この時にはバイオリン製作者になるというよりは、バイオリンの技術で仕事が出来れば良いと思っていました。
修理もとても面白く、短期間で結果が出るので達成感もありましたので、十分修理の仕事に満足していて、当初は辞めるつもりは全くありませんでした。
しかし、入社して4年後にはクレモナに行くことを決意するのでした。
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次回は修理の仕事を辞めてクレモナに留学するところをお話ししたいと思います。