リュートは中世末期からバロックまで流行した楽器ですから、時代的には300年ぐらいの開きがあります。そして音域や用途によっても細分化していったので、一言で「リュート」と言っても様々なものがあります。
MICHAEL PRAETORIUS: SYNTAGMA MUSICUM,1619
そんなリュートの全てを見ていくわけにはいきませんので、今回はリュートの中でも代表的とされるルネサンスリュートについて見ていきます。
リュートの形を説明するときに「半分に切った洋ナシ」とよく言われますが、リュートは洋ナシのようにくびれてはいません。どちらかというと「水滴形」と言った方が妥当です。まあ、ネックまで入れるなら洋ナシに見えなくもないですが。
西洋梨
さて、リュートは發弦楽器(はつげんがっき)と呼ばれるギターやハープなどと同じ楽器の仲間で、指などで弦をはじいて演奏します。
そして、特に特徴的なところは先に述べた水滴形の胴体や折れ曲がったネック、そして表板(響板)に彫刻的に開けられた穴「ロゼッタ」だと思います。
では、具体的に見ていきましょう。
a)胴(サウンドボックス)
「シェル」と呼ばれる薄い板を曲げた部品で構成されます。時には異なる色の板を交互に接着してあるものや、各板の接着部分に細い帯状の板を追加して装飾的にしているものもあります。シェルに使用される木材で一般的なのは、メープル、ローズウッド、イチイです。
シェルは薄い板なので、ただ接着しただけではすぐに剥がれてしまうため、内側に布や紙を貼り付けて接着部分が剥がれないようにしています。
b)表板
通常はスプルースまたは杉の薄い板で作られます。「ロゼッタ」が刻まれ、弦を留めるブリッジが接着されています。
c)ネック
左手指で弦を押さえて音程を変化させる部分である指板が接着されています。しかし、弦を指で押さえて弾いただけでは弦の響きがすぐに止まってしまうので、ガット弦を巻き付けてフレットを作っています。
d)ナット
振動する弦の始まりであり、その上に弦が通る溝が刻まれています。
e)ペグボックス
ペグを固定する横穴のある長い台形の箱で、しばしば裏側はロゼッタと同様の装飾を施されます。
張力が弱いガット弦を使用していたので、ペグボックスをネックからかなり曲げて取り付けることによって、弦の振動部分をナットでしっかり分断出来るようにしてあります。
f)ペグ
弦を巻き付ける棒で、調弦をできるようにする部品です。
g)ブレーシング
表板の内側には梁のような、弦による牽引力に抵抗し表板を補強する部品があります。ブレーシングには、弦による振動を楽器全体に伝えるという、音に関して非常に重要な機能もあります。
h)弦
リュートではそれぞれ一本一本の弦についてではなく、同じ音に調弦された弦を「コース」・「コーラス」、と呼びます。例えば、最高音の一本だけの単純な弦と二本の同じ音に調弦された5組の弦がある場合、6コース(または6コーラス)があると言われます。
i)ロゼッタ
リュートにおけるサウンドホールと言えるものですが、ただの穴ではありません。表板を装飾的に切り出して彫刻したものです。
このロゼッタはウードのときからありましたが、装飾のタイプは変わっています。それはそれぞれの宗教的・文化的背景によって装飾にそれぞれの文様を取り入れて変化してきました。
次回はこのロゼッタの装飾の意味を考えていきたいと思います。
参考文献
Wikipedia
卒業論文 Mizuho IKEJIRI著 「La rosetta del liuto rinascimentale」